日本ではほとんど採れないため、世界各地から輸入しています。
栄養価の高い食材として再評価され、アジアの新興国が経済成長するに伴って需要が増えていることから世界で消費量が増えています。
調査によると、『肌に良いから食べたい』さらにはアンチエイジングや体重のコントロールに効果を期待していることが最大の特徴で、消費者が食品を購入する際に健康・美容・環境をより重視していることが分かります。
”体の内側からきれいにしてくれる食品”を日常的に食べることで、世界では「抗酸化」をキーワードにナッツに注目が集まっています。
アメリカ合衆国
カリフォルニアは、世界の生産量の50%以上を占めるアーモンドの生産地です。夏は暑く乾燥していて冬は冷涼で雨が多く栽培に適した土地です。生産量・作付面積ともに年々拡大を続けています。
同じくカリフォルニア州ではウォールナッツの生産が盛ん。中国、アメリカ、トルコの世界トップ3の国で65%を生産しています。
ピスタチオの生産量はトップのアメリカだけで世界の4割を占めており、作付面積は年々拡大を続けています。
ミシシッピ川流域を原産とするピーカンナッツはアメリカの伝統料理でもお馴染みのポピュラーなナッツ。アメリカ南部の農園を中心に栽培され、ジョージア州とテキサス州が二大産地です。北アメリカの先住民族が使っていた石で割る必要のあるナッツをあらわすPacaneに由来しています。初期宇宙計画(アポロ計画)の際に、栄養価の豊富さからフレッシュフードとして盛り込まれた歴史があります。
中国
ウォールナッツは中国とアメリカ合衆国が二大生産地、世界全体の60%以上を生産しています。東南部原産で、東に渡り中国(胡)、朝鮮から日本に渡ったことから胡桃といわれるようになりました。
ハワイ土産の定番マカダミアナッツは、南アフリカでは生産量の大部分が輸出に回り、中国向けの量が増えています。中国では殻付きの状態で流通することを好みます。他国に輸出する際、加工したものは殻付きよりも収益性が劣るためです。最大の需要国である中国では、バイヤーが殻付きの実を買い付け相場の高騰を招いてきました。さらには自国内で作付をはじめ、収穫が本格化する2022年頃からは世界の生産量の半分を供給する見込みです。
トルコ
ヨーロッパでは古く石器時代から食べていたといわれるヘーゼルナッツの産地です。トルコ北部の黒海沿岸の生産量は世界一。生産量トップのトルコだけで世界の6割を生産し、ドイツやイタリアをはじめEU諸国など100ヵ国ほどに輸出されています。
トルコを代表する肉料理のケバブに練りこんだり、トルコアイスのトッピングにしたり、スライス、刻み、ロースト、パウダーなど用途に合わせた形で売られていて生活に欠かせない食文化をつくっています。
ピスタチオはアメリカやイランに次ぐ生産量を誇ります。古代トルコ、ペルシャなどの地中海沿岸が原産。砂漠に自生していたものを食用に栽培するようになり、クルミに次いで歴史の古いナッツです。2000 年以上前のローマ時代にピスタチオが栽培されていたという記録が残っており、ローマ時代の遺跡からも栽培の様子が窺えます。ピスタチオが育つためには特定の条件が必要です。北緯 30-45 度の範囲で、適切な水量と水はけのよい土地に限られ、その条件がピスタチオの質と収穫量に大きく影響します。
南アフリカ
マカダミアナッツの生産国として、オーストラリアを抜いた時期もある南アフリカ。そのほとんどがEUやアメリカに加え日本向けで、現在は中国需要にも支えられ価格が下落しません。2022年、ケニアはマカデミアナッツをオンラインで中国市場で販売することに関し、中国とMoU(合意覚書)に調印しています。
インド
日本のカシューナッツ輸入数量の7割以上はインド産です。
カシューナッツの栽培と加工は20世紀始めにインドで始まりました。はじめ欧米の富裕層の食べ物として広まり、大変栄養価が高く用途も豊富なため人気が高いナッツです。この頃は、ヴィーガンや乳製品を摂らない食生活を実践している人が増えているのに加え、健康志向が追い風になって、アメリカやドイツを中心に需要が急増しています。
また、原産地としてだけでなく加工国としての役割も担っています。ブラジル、タンザニア、モザンビークなどアフリカ諸国が原産地のナッツを、脱穀、脱皮の加工設備が整ったインドへと輸出し、加工したあと中国向けへ販売するなど重要な産業の一つとなっています。
しかしながら、かつて加工拠点の中心地だったインドは、IT化が進んだベトナムとの競争にさらされ苦戦を強いられています。2020年、ベトナムのカシューナッツの輸出は新型コロナ禍の影響で大打撃を受けたものの、前年同期と比べ10%増と輸出量を伸ばしており、進んだ加工技術がベトナムの優位を支えています。
オーストラリア
マカダミアナッツの原種がクイーンズランド州南部など北東沿岸の熱帯雨林に自生していたため、クイーンズランド・ナッツとも呼ばれています。
先住民アボリジニのご馳走であり、豊富な土地を表すシンボルであり、儀式の贈りものや物々交換の品物として利用されていました。1880年代には農園が作られ、商業栽培は1950年代から始まりました。
ハワイ土産が有名ですが、当時栽培が盛んだったさとうきび用の防風林としてハワイに移植したのが始まりで、品種改良や栽培の研究が進んで国を代表する特産物になりました。90年代まで世界1位の生産量を誇っていましたが、オーストラリアが首位逆転し、2010年代からは南アフリカにその地位を譲っていました。現在オーストラリアは世界有数の生産国で、800軒以上の生産農家がありその7割以上によっておよそ40か国以上に輸出されています。豊かな火山灰の土壌と亜熱帯気候で、マカダミアナッツ生育に適した環境に恵まれています。
オーストラリアは環境意識が非常に高く、流通には栽培者と加工業者が採用しているオーストラリア政府の残留物質調査(NRS)の厳しい基準をクリアしなければなりません。また、東海岸近くに主な栽培地域があることから、鮮度のよいナッツを長時間輸送することなく世界の取引先へ送り出すことが可能です。収穫から殻を割って加工し、発送するまでのオペレーションを一括して行うことで、農園から製品になるまで安全で透明性の高い優れた体制が整っています。